「父親と違う生き方」問題

「父親と違う生き方」をした人の息子が「父親と違う生き方」をしたとき、それは父親と違う生き方なのか、それとも父親と同じ生き方なのか、という問題。

注:中川裕志先生(@HiroshNakagawa3)による。
http://twitter.com/#!/hiroshnakagawa3/status/127780766112415745
http://twitter.com/#!/hiroshnakagawa3/status/127780967879417856

さて、

xがyの父親:x=F(y)
xがyの人生:x=L(y), y=A(x)
xとyが違う:xとyが同じプロパティを持っていない
¬∃P(Px∧Py)

と定義すると、「父親と違う生き方」をした人の息子が「父親と違う生き方」をしたことは、以下のように定式化される。

aがbの父親で、bがcの父親
a=F(b), b=F(c)
bは「父親と違う」生き方をした
¬∃P(P(LFF(c))∧P(LF(c))) --(1)
cは「父親と違う」生き方をした
¬∃P(P(LF(c))∧P(L(c))) --(2)

※厳密には、父親の生き方も息子の生き方も「生き方である」というプロパティは満たすはずで、上のような定義は不適切かもしれないが、そのことが以下のパラドックスの本質ではないと思われるので割愛。

ここで、cは「父親と違う」生き方をしていない、という命題は、
∃P(P(LF(c))∧P(L(c)))
となる。これは、LF(c)とL(c)の両方が満たすプロパティがあれば、存在導入律により成立する。

ところが、c=AL(c)より、LF(c)=LFAL(c) であるから、

(1)より、¬∃P(P(LFALF(c))∧P(LF(c)))
(2)より、¬∃P(P(LFAL(c))∧P(L(c)))

したがって、LF(c)とL(c)は、いずれも
{x| ¬∃P(P(LFA(x))∧P(x)) }
というプロパティを満たすので、
∃P(P(LF(c))∧P(L(c)))
である。しかしこれは(2)と矛盾する。