Eternal Melody II : YOSHIKI


ファンの期待と不安が入り交じる中で、待望のYOSHIKIソロ作品第一弾がリリースされた。その仕上がりは、期待に違わないもので、一曲目の"Unnamed Song"のメロディーは、彼がソングライターとして次の段階に突入したことを示しているし、天皇陛下御即位十周年記念式典の"Anniversary"がついに録音されていたり、また、Globe所属時の"Seize the light"や愛知万博テーマ曲"I'll be your love"等、ここ数年のベスト盤と言っても良い。

圧巻は、三曲目に収録された"Without you"である。これはHIDEのために書かれた曲であり、X JAPANはとうの昔に解散しているというのにX JAPAN名義になっていたり、ボーカルは入っていないのに歌詞が付いていたりする辺りに、発売前からYOSHIKIの並々ならぬ怨念を感じてはいた。そして実際に聴いてみると、あまりのことに絶句してしまった。この人は、想いの強い人なのだ、とつくづく思う。

以前、雑誌のインタビューで大槻ケンヂ氏が、成功しているミュージシャンを四つに分類したことがあった。そのうち二つが何だったかは忘れてしまったが、残る二つは「カリスマ」と「天才」だった。「日本には天才タイプはいない」という大槻氏に、インタビュアーが「XのYOSHIKIは?」と訊いたのだが、大槻氏は「いや、彼はカリスマでしょう」と答えたのだった。その時は「言い得て妙だな」と思ったものだったが(勿論大槻氏はYOSHIKIに才能がないと言っていたのではなく、彼の人気の中核は才能よりむしろカリスマ性である、と分析したのだと思う)、今から振り返るとYOSHIKIは「天才というよりカリスマ」だったのではなく、「カリスマ」でいるために「天才」であることを犠牲にしていたのではないだろうか。

しかし、楽曲やミックスの恐るべき完成度とは裏腹に、長年YOSHIKIと付き合ってきたファンが頭の中で色々補いながら聴かないと成り立たない部分も多い。たとえば、X JAPANのバラード"Longing"が収録されているのだが、何と「メロディーが録音されていない」。随所にその手の危うさと狂気が漂う作品。ともかく、彼は牙を剥いて立ち上がった。我々も続こうではないか。