「恐怖の神殿」(ファイティング・ファンタジー第14巻)

I・リビングストンの作品。15年ぶりくらいに開いてみたら、あまりの駄作ぶりに吃驚しました。なんというか、「恐怖の神殿」は「ゲームブック的」ではないのです。

ファイティング・ファンタジー・シリーズがブームになるにつれ、盟友スティーブ・ジャクソンがなぜか寡作となっていく中、ファンからの「もっと続編を!」という声に応えるのは自分であるという責任感のもと、「いや、実はゲームブックを作るのはそれほど難しいことじゃないんだ。スティーブと毎週やってるD&Dでもこんなシナリオをよくやっているんだよ」とリビングストンが言ったかどうかは知らないですが、そのまんまゲームブックにしてみたところ、「典型的な、D&Dの下手なマスター」が書くシナリオになってしまった、という感じ。

「挿絵が下手」というのも大きいかもしれないですが。たとえば最後の敵マルボルダスが「それはないだろう」という貧相な外見をしているのもポイント低いです。

こうしてみると、「運命の森」「盗賊都市」辺りの傑作ぶりというのは一体なんなのか、と逆に考えさせられてしまいます。初期の作品は何かに取り憑かれたように素晴らしいわけですが、そこには何か本人の与り知らぬ力が働いていて、彼はその力を自覚していなかったのだと思います。

D&Dの初期のモジュールもそうですが、何作かファンタジーものをやると、マンネリ化に対する強迫観念のようなものが出てきて、必ず砂漠やら熱帯やら寒冷地に行き始めるのですが、そういう試みは何故かことごとく失敗するんですよね。おそらく、「指輪物語」の影響下から抜けてしまうことが原因なんだと思います。