今回の選挙とイギリスの議院内閣制

日本と英国の統治構造は非常に良く似ており、政治・行政制度を考えるにあたっては、英国は日本にとって、また(あまり認識されていませんが)日本は英国にとって、主要先進国中でもっとも参考となりうる国でしょう。両国とも君主を象徴的な国家元首として戴いています。大統領制ではなく、議院内閣制を採用し、議会与党の党首が首相を務め、内閣も与党の議員を中心に構成されています。
(中略)
英国においては、議院内閣制の下、首相及び内閣に名実共に権力が集中しており、首相や閣僚のリーダーシップが発揮されやすい環境にありますが、日本では伝統的に、与党、内閣、そして官庁の間で実質的な権力が分立しています。すなわち、内閣が与党から選出されており、党首が首相となっているにも関わらず、彼等が決めた政府の施策がそのまま党でも自動的に承認されるわけではなく、党においては全く独自の権力構造、意思決定過程が存在しています。与党の有力政治家達は、閣僚等の公式なポストとは関わりなく、インフォーマルな形で政府の施策に対する実質的な影響力を保持しており、施策を実現するためにはこうした政治家達の了解をとりつけることが必要となります。
(中略)
しかし、今回の選挙に際しては、小泉首相は郵政法案反対派議員には対立候補を立てるなど、郵政法案への賛否を問うものであることを前面に打ち出しています。この結果、この選挙は政党間の政策を巡って争われる要素がこれまでになく強いものとなっています。小泉首相トップダウン型の手法や、こうした政策選択型選挙の導入は、その政策自体の是非はさておき、奇しくも日本の政治をより英国に近づけつつあるともいえます。

今回の選挙においては、政治家にも有権者にも「政策の是非はともかく、小泉首相のやり方は強引で良くない」という意見が多く見られますが、そもそも政治とは何であるか、そこから導かれる、政治における「やり方」とはどうあるべきか、ということを考えることもなく、自分の職場や身の回りの人間関係になぞらえるだけで判断する、という態度は見直されていくべきだと思いました。

しかし、「日本と英国の統治構造は非常に良く似ており」ということは、似てない国の方が多いんでしょうね。あまり意識したことはありませんでした。