古舘伊知郎とホリエモン

9/11(日)の選挙開票実況番組(「選挙ステーション2005」テレビ朝日系)で、亀井静香氏と競り合っている最中のホリエモンに、古舘伊知郎がスタジオから質問をしたのでした。たしか「金の次は権力、と考えているんでしょうか?」といった質問だったと思います。この質問自体、如何なものかと思いますが、ホリエモンは「政治を権力と考えていることがそもそも古いと思う」と反論しました。これは(色々注釈を付ける必要はあるにせよ)一理ある主張だったと思います。

しかし何を思ったのか、古舘伊知郎はこの反論に不機嫌になり、続けて「もし当選したら、何をどうするつもりなのか」という質問をしたのでした。ホリエモンは「小選挙区で選挙戦をやるのは大変で、正直そんなことを考える余裕はないですよ」と言いました。古舘伊知郎は「余裕がないわけないでしょう。そんなに大変ですか」と何故か更に怒り、ホリエモンは「小選挙区から一度出馬してみたら分かりますよ」と答えたのでした。

ホリエモンのその答えに古舘伊知郎はキレて、「そんな、選挙に出ろなんて強制される覚えはないですよ!」と叫んだわけですが、彼のこの一連の「ボケ」は一体どういうことなのだろう、と不思議に思いました。

すべて記憶に頼って書いているので、不正確な引用になってしまっていることは断っておきます。

おそらく、世の中にはホリエモンに対する「金の亡者で、次は権力を狙う」といった単純なモデルがあって、TV的にそのアングルから語りたい、と思ったかどうかはともかく、古舘伊知郎はその単純なモデルを微塵も疑っていないのでしょう。そのモデルを前提にすると、ホリエモンの答えは「質問をはぐらかして本心を言っていない」という解釈になり、欲しい答えが返ってこないことと相まって腹が立ったのでしょうか。どうもすっきりしないですが。

思うにホリエモンという人は、今回の選挙で勝ち目があるないはともかくとして、郵政民営化はしなければいけない(と彼自身思っている)ことだし、自分がそのための広告塔になるのであれば良し。ライブドアの宣伝にもなるし、面白そうだし、今までにない経験にもなるだろう、的な考えで今回の選挙に臨んだのではないかと思うのです。そしていざやってみると、広島の小選挙区を歩き回りながらの選挙戦、というのは、予想していた以上に「今までにない経験」だったのではないでしょうか。それが「小選挙区から一度出馬してみたら分かりますよ」という発言に繋がったのだと思うのです。現に古舘伊知郎小選挙区から出馬した経験などなく、その大変さも知らないわけで、それが彼の発言の前提になっているわけですから、ホリエモン古舘伊知郎の失礼さを咎めるのは当然なのではないでしょうか。

では、古舘伊知郎はキレる代わりにどうすべきだったのか。あの場においてキャスターとして望ましい態度とは、小選挙区での選挙戦がどう大変だったのか、ホリエモンが今回どういう経験をしたのか、を掘り下げてインタビューすることだったのではないでしょうか。ホリエモンの側からは、古舘伊知郎にああいう態度に出られたのではそれ以上どうすることもできないわけです。

今回の件では、メディア・リテラシーの大切さだけではなく、メディアからどう自分の立場・主張を守るか、ということも考えていかなければいけない、と考えさせられました。まあ、他人に編集される立場になってはいけない、ということかもしれませんが。