百科事典での「トポス」

最近、自分の仕事とトポス(数学用語です)の関係を調べているのですが、ふと「百科事典には載っているのだろうか、載っているとしたら、あんなものをいったいどうやって説明しているのだろうか、短く説明できるものだろうか」と思い、平凡社の「世界大百科事典」*1を引いてみました。

トポスが重要な意味をもってきているのは,そのためだけでない。そのほかに,われわれにとって切実になってきたものとして,〈存在根拠としての場所〉〈身体的なものとしての場所〉〈象徴的なものとしての場所〉がある。これらはそれぞれ,意識的自我の存立根拠としての共同体,無意識,固有環境,活動する身体によって意味づけられ分節化された場所やテリトリー(縄張),濃密な意味とつよい方向性をもって成立している場所のことを指している。

どうやら元は哲学用語であったようで、結局、数学用語としてのトポスは載っていませんでした。それはいいんですが、上の文章、全然意味が分からないのも度を超していて、笑ってしまいます。

ところで「意識的自我」とか言われると真っ先にギブスン&スターリングの"Difference Engine"を思い出しますが、同事典では何て書いてあるのだろうと思って引いてみると、

ヨーロッパでも,たとえば現代英語の I は,古くは ic であり,ドイツ語の ich などと同族の語であって,ラテン語のエゴ ego やギリシア語の ego~ にさかのぼることができる。ところで,これらの言語では普通,主語の人称は動詞の変化で示されるから,ego や ego~ という語は,話し手がとくに自分を強調する場合にしか使われなかった。このことも,自称のための語が,話し手がなんらかの意味で自分自身を指示するところから生まれたということを物語っている。自分を強調するということが,すでに自己への再帰的指示を含んでいるはずだからである。

という部分があって、これは面白いと思いました。

*1: (c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha