「武道の復権」南郷継正著





読み返すのは十年ぶりになる本ですが、以下のくだりで目が醒めました。

長期的かつ科学的視点で見るならば、壁に当たったときこそ、上達のための絶好のチャンスを与えられている、ということである。苦手な人(下手な人間)程、練習を理論的なものにすべきであり、同時にまた意識性を獲得するという側面では、かえってより優位な立場にある、ということが理解されるのである。
「〈理論の〉必要性を認識したこと−日比野研(p.53)」より

壁に当たっている時というのは、「取り組んでいる対象」の構造に気を取られるあまり、「対象に取り組むという行為」の構造を忘れがちになります。壁に当たっている時は、後者を意識するチャンスであり、また、それなくして偶然壁を越えてしまっても、また同じ壁に当たることになるのでしょう。

武道と研究は「勝負論」が構造的に異なるので、こちら側に持ってくるときには考慮が必要な議論だとは思いますが、大ざっぱには、型≒勉強、組み手≒研究、という関係にあると捉えています。