アスピリンと鎮痛作用
なぜアスピリンで痛みが止まるのか、ということを医者の友人に尋ねたところ、「アラキドン酸カスケードが関わっている」という、なにやら秘儀的な答えが帰ってきました。面白そうなので世界大百科事典(平凡社)とGoogle*1で調べたところ、
- 動物が生体内で合成できず,食物によって摂取する必要のある脂肪酸を必須脂肪酸という。*2
- 必須脂肪酸には、綿実油、大豆油などに含まれるリノール酸、亜麻仁油に多く含まれるリノレン酸、肝油などに含まれるアラキドン酸がある。アラキドン酸はリノール酸からも導かれる。
- 以下がアラキドン酸カスケード(=アラキドン酸の代謝経路)
- アラキドン酸は細胞膜リン脂質から酵素(ホスホリパーゼA2)によって切り出される。
- アラキドン酸が、酵素(シクロオキシゲナーゼ(COX))によりプロスタグランジン(PG)H2に変換される。
- PGH2が、それぞれ酵素によって、各々のプロスタノイド(PGAからPGJまで10種類知られているらしい)に変換される。
- PGは、炎症を促進する側面(発痛させる(疼痛を起す)/血管透過性を亢進させ、腫脹・浮腫などを来たす/発熱させる)と、炎症を抑制する側面とがある(ここは深そうな気配)
- アスピリンは、上記のうちPGH2の生成を抑制する(COXの働きを阻害?)ため、PGの生成量が減り、痛みを感じなくなる/炎症が治まる
まあ、鎮痛剤の投与が、病気の治療ではなくその場しのぎである、という事実はあるわけですが、では西洋医学は意味がないかと言われるとそんなことはなく、やはり生命について上述のような細かい事柄が見えてくるというのは面白いわけで、重要なことはそこからすぐに新薬の開発とか新しい論文とか医学者としての業績とかを考えずに、分かってきた個々の現象がもう少し巨視的な観点からみたときに一体生命について何を示唆しているのか、を汲み取ろうとすることなのではないでしょうか。その辺りに、代替療法との接点が見えてくる気がします。