内包性についてのメモ

(ここでは*は文を真にする意味解釈が存在しないことを表す。)

(1a) ロード・オブ・ザ・リング(PJ版)では、ヒューゴ・ウィービングはエルロンドだ。
(1b) ロード・オブ・ザ・リング(PJ版)では、エルロンドはヒューゴ・ウィービングだ。

(2a) ロード・オブ・ザ・リング(PJ版)では、エルロンドはエージェント・スミスだ。
(2b) ロード・オブ・ザ・リング(PJ版)では、エージェント・スミスはエルロンドだ。

(3a) *ロード・オブ・ザ・リング(PJ版)では、エージェント・スミスヒューゴ・ウィービングだ。
(3b) *ロード・オブ・ザ・リング(PJ版)では、ヒューゴ・ウィービングエージェント・スミスだ。

「エルロンド」にはエルフの王としての「エルロンド」と、「エルロンド役の俳優」という二つの読みが存在している。「エルロンド」以外が補語になっている場合((1b)(2a))は、「エルロンド役」の読みしかない。同時に、「ロード・オブ・ザ・リング」は「ロード・オブ・ザ・リングという映画」の読みになる(物語世界そのものを指すことはできない)。

(3a)には*を付けたが、「エージェントスミス役で有名なヒューゴ・ウィービングは、ロード・オブ・ザ・リングの中で実にヒューゴ・ウィービングらしい演技を見せている」という読みが存在する。この場合の「ヒューゴ・ウィービング」は「ヒューゴ・ウィービングらしさ」という意味になる(それ以外の読みは(3a)には存在しない)。

同様に、(3b)には「ヒューゴ・ウィービングは、ロード・オブ・ザ・リングでもやっぱりエージェント・スミスに見えてしまう」あるいは「ロード・オブ・ザ・リングにおけるヒューゴ・ウィービングが演じるところの役回りは、マトリクスにおけるエージェント・スミスのような位置づけだ」という意味が存在する(後者は明らかに偽ですが)。

これらを統一的に説明するためには、やはり「は」の意味を「=」だけで表すわけにはいかなさそうだ。